労働時間は管理するもの。残業は命じるもの。

こんにちは。

社労士の福井です。

 

労働時間は管理する

時々相談のある「従業員が自分勝手に残業してしまう」問題。「早く帰るように伝えているのですが帰ってくれません」とのコメントが多いのですが、細かく状況を伺うと仕事の内容まで把握していることはありません。

中小企業は成果物(仕事の結果)とプロセス管理の相関を取るのが苦手(管理職がマネジメントしてないとも言う)。結果、労務管理が各従業員任せになり、早く帰る人とどれだけ時間をかけても終わらない人の2極化になる事が多い気がします。残念ながら仕事が遅い方は遅い業務進捗に合わせて業務配分を行い(むやみに残業が増えないようにする)、不達成の業務に対するマイナスの評価を賞与などで付ける(月次給与は不利益変更になり差がつけられないので業績評価で差を付ける)事で不公平な部分を相殺することになるでしょう。

そしてこのような状況になった場合は、まず「対象者の業務進捗の把握」から入らなければなりません。ここを飛ばして勝手な残業の禁止を命じても、命じられた従業員にしてみれば「会社のためにやっているのに・・・」ということになります。本人が自分の業務進捗が遅いと認識している場合と認識していない場合で反応は違いますが、どちらにしても標準的に進めた場合の業務進捗から自分が遅れている「差」の部分を自分自身で認識できるように伝えていくことが大事です。そうすることにより業務を減らして調整しつつ「差」を埋めるべく業務進捗方法を伝えていき、本人の業務遂行能力の向上を含めて話し合いで進めていく事ができます。

 

残業は命じる

さて、労働基準法で決められている労働時間・休憩・休日の原則は以下の通り(厚生労働省HPより)で、この枠組みの中で従業員を働かせる必要があります。

  1. 使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
  2. 使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
  3. 使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。

この時間を超える業務の指示は、労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者との労使協定において、時間外・休日労働について定め、行政官庁に届け出た場合には、法定の労働時間を超える時間外労働、法定の休日における休日労働が認められます(一般に「36(サブロク)協定」とも呼ばれています。)。

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実を言うと残業を命じるためには「36(サブロク)協定」を提出するだけではダメで、契約内容として就業規則への記載は必要不可欠とされています。そして就業規則に基づき業務命令として「時間外労働の指示」をすることになります。そうです、残業は勝手に労働者からするものでなく、法的には「業務命令として法定労働時間を超えてやむ得ず働かせる」位置づけとなります。

そもそも就業規則に記載がなければ従業員が終業時間後に残る必要もありません。

ただし、前述の要件をクリアした上で時間外労働の申請を労働者の業務進捗に合わせ本人の残業申請制度で運用することは可能です。やり方は自由。ただし、時間外労働をさせたからには働かせすぎで体調不良にならないように管理する義務が会社にはあります(安全配慮義務)。

働き方改革や若者の意識変化により残業や休日労働の状況はかなり変わっています。それでも法定時間外に働いてもらうには状況把握は会社の義務ですのでしっかり行っていきましょう。

 

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